葵の姿が小さくなったのは副作用の類ではない。

これこそ、本来の効能を発揮できなかった場合の結果なのだ。


アベル「本来の効能が発揮されれば、本来の肉体のまま能力が抑えられた筈なんだ。それがあの通りの結果になった。結果からいえば、デメテル様のお考えは失敗に終わった。」

アル「では、ペルセフォネの能力はこのまま！？」

ムウ「死の能力、ティタンの鍵の能力。共に止められない所まで来てしまったという訳ですね？」

一輝「最悪、ティタン神族のみならず、死の能力に目覚めたペルセフォネまで相手にしなくてはいけないという事になるな。ゼウスですら手に負えぬというペルセフォネを。」


２つの能力の覚醒＝ペルセフォネのもう１つの人格の復活。

今までの愛らしい性格に相対する人格。

では、どれほど恐ろしい能力であり、凶悪な人格であろうか。

それを考えると、聖域にとっても大いなる脅威である事は間違いない。

下手をすれば、全戦力をもってペルセフォネと戦う事になる。

最悪の場合、海界、冥界、天界の戦力も持ち出されるかもしれない。

そして、ペルセフォネの存在自体を滅する必要も出て来る可能性がある。

何より、あくまで神格の器である葵の肉体はどうなってしまうのか。

ただの「城戸葵」さえも消滅させなくてはいけないのか。

沙織はあまりに恐ろしく、考えたくも無い事態が目の前に生じ、その口を閉ざしてしまった。

黄金や一輝さえも。

あの愛らしく、争いや、誰かが傷つく事を極端に嫌う葵と戦わなくてはいけないのかと。

アベルは黙り込んでしまった沙織、聖闘士たちをソッとしてその場を去った。

ドアを閉めると、ドアにもたれ深い嘆きのため息を吐き出した。


アベル「世界の秩序の為には、ペルセフォネすらも消す事を考えなくてはならない。しかし、我らの心はその辛い出来事に耐えられようか…。ゼウスも、デメテル様も、その嘆きで壊れてしまいそうだ……。」


アベルはそう呟くと、何処かへ姿を消した。