一方、その頃。

葵の部屋で、青銅の４人と葵が遊んでいた。

しかし、葵にはいつもの元気が見えない。

恐らく、こんな幼児体型になったのが母親の調合した薬と、それを飲ませるように仕向けたのが父親の命令だったから落ち込んでいるんだと青銅たちは思っていた。


星矢「元気出せよ、葵。」

「せーやたん…。」

氷河「そうだぞ、葵。葵にそんな悲しそうな顔は似合わないぞ？」

「ひょーがたん。」

紫龍「それに、小さくなった葵も随分と可愛らしい。少しの間だけ我慢すれば、必ず元に戻れる方法を沙織さんが聞きだしてくれる。」

瞬「だから、それまで我慢しようね？」

「ありがとう、しりゅーたん、しゅんたん。でもね、葵ね、おかーちゃまのくすりのせいで、げんきないわけじゃないの。」

瞬「え？　それじゃあ、どうして？」

「きいてくれゆ？」

氷河「無論だ。ゆっくりでいいから話してごらん、葵。」

「うん。あのね…。」


葵は小さな体と、幼児化した影響で舌足らずな状態であるに関わらず、全身で表現しながら話し出す。

沙織のお遣いで１日だけなら泊まっても良いと許されて冥界へ行った事、三巨頭と双子神とハーデス神殿へ行った事、ハーデス神殿の中庭でハーデスと美しい女性が仲睦まじく話していた事を。

話している内に、葵の目にはジンワリと涙が浮かび今にも零れ落ちそうになっていた。

話を聞いているうちに青銅たちの心の中にはハーデスへの不信感が募っていった。

あんなにもペルセフォネ、ペルセフォネと愛でていたのに、どうして今更、他の女性と仲睦まじくする必要があるのだと。


「さいしょはね、しらないおんなのひとっておもってたの。でもね、やっぱりどこかでみたことあるおんなのひとだっておもうの。だれかはわからないけど、しってるひとなの。ハーデス、葵がきらいになっちゃったのかなぁ…。ぇぐっ……。」

瞬「泣かないで、葵。君に涙は似合わないよ。」

紫龍「そうだぞ。あのハーデスが葵を嫌いになる訳が無いだろう？」

氷河「そうだとも。これまで眩しいほどに葵を想い、愛してきたんだ。突然、お前を嫌いになるはず無いさ。きっと、天界の遣いの女神だろう。」

星矢「だからさ、心配する事ねぇって！　もし、本当にハーデスが心変わりしたなら、葵の父ちゃんに言っちまえよ。」

「おとーちゃまに？」

星矢「ハーデスの上に雷落としてこらしめてくれって言えば、やってくれんだろ？」

「わかんにゃい…。」

瞬「そうだ、葵。面白い事教えてあげようか？」

「おもしろいこと？」

瞬「そう。あれはまだ、僕たちが星の子学園にいた頃の話なんだけど…。」


星矢たちは葵の悲しい心を少しでも和らげようと、昔話を始めた。

自分たちの幼かった頃の話を………。