アベルは用意していた嘘をでっち上げた。

言い方は一言一句よどむ事無く、完璧に話した。

天界の神々が普段からペルセフォネを溺愛している事から、これくらいなら信用するだろうと踏んでいたのだ。

しかし、相手が悪い。

女神アテナは『知恵』も司る『戦神』である。


沙織「なるほど、そういう事でしたの。」

アベル「アテナもそう悪い事ではないと思うだろう？　１５日辛抱すればペルセフォネは元通りに…。」

沙織「何て言うと思いましたの？　甘くてよ、お兄様？　私は知恵も司る戦神という事、よもやお忘れではありませんわよね？」


沙織は席を立ち、ニケの杖をギュウウッと握り潰す位の握力で掴んだ。

その顔は満面の笑みを湛えているが、小宇宙はドス黒く漂っている。

流石のアベルも固まる。


沙織「そのような戯言、聞く耳持ちませんわ！！　さぁ、さっさと真実を白状なさってくださいませ。」

アベル「し、真実と言われてもなぁ…；」

沙織「さもなくば、ここに居る聖闘士たちから、顔が変形して、形状記憶合金でも元に戻れないほどの鉄拳が見舞われます事よ！？」


黄金たちがそろって握り拳を見せる。

ムウやシャカあたりならまだ優しいだろうが、アルデバランやアイオリア、アイオロスがズズイッと前に出てアベルにガンを飛ばしている。

これには流石のアベルも冷や汗どころか脂汗がにじみ出る。


アベル「それは遠慮願いたいなぁ；」

沙織「ならば真実を！　葵が何故あのような幼子の姿になる必要があったのか、真実をお教えください！！　父上とデメテル様からお叱りを受けるというのなら、この私が代わりにお叱りを受けますから！」


沙織は必死にアベルを説得し続けた。