第３話「女神の秘密。」



神々の住まう天界オリンポスに次ぐ楽園エリシオン。

その中に在る神殿に今、アテナ、ハーデス、ポセイドンを除くオリンポスの１２神が揃っていた。

豪華な大理石のテーブルの上座にはゼウス、両脇には男神であるヘパイストス、アポロン、ヘルメスが、反対には女神であるヘラ、デメテル、ヘスティア、アフロディーテ、アルテミスが着席している。

この地の主ハーデスには、ペルセフォネに秘密でエリシオンに遊びに来た事にしておきたいので、どうか内密にと頼み、接待は不要なので冥界の執務に没頭するように申し添えた。

テーブルの真ん中には鏡のような球体が浮かび、その中には幼くなってしまった葵の姿が写っている。

いつもなら皆が惚気まくっているのだろうが、今は皆、沈痛な面持ちである。

重い沈黙を破るように、ゼウスが口を開いた。


ゼウス「ティタン神族復活の鍵、破壊者がじきに目覚める。」

デメ「そ、そんな…っ！　あぁ、何という事なの。」


その言葉を聞き、ペルセフォネの母であるデメテルは表情を見る見る歪め、泣き崩れた。


ヘラ「デメテル…っ。」


隣に座っていたヘラがデメテルを優しく抱き寄せた。


デメ「どうして、どうしてこんな事にっ…。」

アフ「デメテル、何て可哀想な…。」

ヘス「また、あの時のような悪夢が繰り返されるのでしょうか…。」

アル「だとしたら、ペルセフォネがあまりにも可哀想ですわ。」

ヘパ「いや、可哀想なんてものじゃない。あまりに惨過ぎるではないか。」

アポ「左様。あの争いとは全く無縁な可憐なペルセフォネに、何故この様な重い運命がのしかかるのだっ！」

ヘル「我らが長ゼウス！　何とかして、ペルセフォネを助けられないのですか！？」


ゼウスは何も答えなかった。

しかし、彼のあまりの苦悶の表情に、誰もが口を閉ざしてしまう。

その視線は、デメテルの薬で幼くなってしまった愛娘に注がれたままで…。