（ハーデス…。）


天界にある父ゼウス、母デメテルよりも大きな愛情を持って自分を妻としてくれたハーデス。

本当の意味で妻の務めを果たしていない自分を変わらぬ愛で守ってくれるハーデス。

昔から、愛を知らない冥府の王として畏怖されてきたハーデス。

でも、ペルセフォネは知っている、葵は知っている。

彼は誰よりも愛を求め、誰よりも愛する事の大切さを知っているのだと。

だからこそ、自分を大切にしてくれるのだと。

一度、この身が消滅してから彼はどれだけ嘆き悲しんだだろう。

宴の中、カミュが造って贈られたという自分の氷像を見つめている時、彼はどれだけ自分を恋しく思ってくれただろう。

それがわかるからこそ、自分もハーデスが愛しくてたまらない。


（ハーデス、誰よりも…ありがとう。もう少しだけ待っていてね？　もう少し大人になったら、きっと…本当のお嫁さんに…なれるから///）


ハーデスの美しい肌色の頬に口付けて毛布をかけると、葵は再び沙織の元へ。

沙織に毛布をかけて、自分も同じ毛布の中へ潜る。


（お姉ちゃん、ありがとう。私もお姉ちゃんに何かあったら、一生懸命に頑張るからね？　…大好き。）


沙織の頬にキスをして、葵は再び眠りに付いた。