「お兄さんたち、誰？」


いつもの葵が、ベッドの上で自分たちを怯えた目で見ていた。

そして、発せられた言葉に皆が愕然としている。


サガ「葵？　何を言っているんだ？」

「葵？　私、葵って言うの？」

ロス「葵、冗談だろ？　君は城戸葵、アテナの妹君ではないか。」

「アテナ？」

沙織「私の事ですよ。」

「でも、貴女はさっき城戸沙織って言ってた。」

沙織「そうです。城戸沙織であり、アテナの化身でもあるのです。」

「アテナって何？」

シオン「ギリシャ神話で最も気高く、美しい女神ぞ？　そなたもアテナと同じ、女神の化身ではないか。」

「私が、女神？」

童虎「何も、覚えてはおらぬのか？」

「わからない、何も、わからない…！」


葵が自分の事も、聖域の事も何一つ覚えていない。

その場にいる者は多大なショックを受けた。


女官「アテナ！」

沙織「何事ですか？」

女官「は、はい。冥界から冥王様以下、双子神様、パンドラ様、三巨頭様が火急のお目通りを願って、既に教皇の間へ来ております！」

沙織「…そうですか。」

衛兵「アテナ、御報告いたします！」

沙織「そちらは何事です？」

衛兵「海皇様、七将軍様、テティス様、お越しでございます！」


沙織の叫びが、地上のみならず海界、冥界へと届いた証拠だろう。


沙織「もしかしたら、彼らに会って思いだす事もあるかもしれませんね。皆さんをここへ。」

女官「かしこまりました。」

衛兵「御意！」


バタバタと走り去る女官と衛兵。

葵の目には涙が溢れている。