数日後、沙織は聖域に向かっており不在。

辰巳は沙織の代理でグラード財団の執務に入っていて、葵は１人で窓の外を見ていた。


コンコンッ


ドアをノックする音が耳に届き、葵はどうぞと声をかける。


星矢「よっ、葵。体の具合はどうだ？」

「いつもと、変わりません。」

瞬「今日は、僕たちとお出かけしないかい？」

「お出かけ？」

紫龍「あぁ。別に記憶がどうこう言うわけじゃない、１日中こうしていても埒もない。」

氷河「屋敷の中に閉じこもってばかりじゃ、体にも悪いぞ。たまには表の空気を吸いに行こう？」

「でも、沙織さんや辰巳さんは…。」

一輝「沙織お嬢さんは聖域に行っているし、辰巳ごときは放っておけばいい。」

「……；」


でも、今日は良い天気だし、ここのところずっと部屋の中にいたし。


「少し、だけなら。」

星矢「よし、じゃあ決まりな！　行こうぜ！」


こうして、葵は星矢たちと外へ出かけた。


「ここは？」

瞬「ここは、星の子学園。僕らも居た事がある孤児院だよ。」

紫龍「そう。そして、君も頻繁にここへ来ていたんだ。」

「私も？」

氷河「よく見てごらん、葵。園内はとても花や緑が多いだろう？」


氷河に言われて辺りを見回すと、確かに花が咲き、木々が生い茂っている。


一輝「コレは、お前が手ずからに植えた物だ。」

「私が？」

一輝「そうだ。昔はそれこそ殺風景な場所だった。たまたま、沙織お嬢さんの代理で慰問に来たお前が、せっかくだから花や木を植えようと率先して行った事だ。」

瞬「そのうち、子供たちもお手伝いするようになったんだ。君が泥だらけになっても汗をいっぱい掻いても、子供たちは口を揃えてこう言ったんだ。葵お姉ちゃん、綺麗だねって。」

「そんな事があったんですか…。」