ささやかな昼食を終えて会話をしていたが、刻限になっても葵にこれといった変化はなかった。


ゼウス「そろそろ、天界へ戻る刻限だ。へラ、デメテル、戻るぞ。」

デメ「ですが、あなた…。」

へラ「そうですわ。ペルセフォネをこのまま放って帰るというのは…。」

ゼウス「案ずるな。地上ではアテナが、海界ではポセイドンが、冥界ではハーデスが全力でペルセフォネを守ってくれよう。我らは天界でペルセフォネを元に戻す方法を探すぞ。」

デメ「わかりました…。ペルセフォネ、こちらへ。」


葵はデメテルのそばへ。


デメ「何も出来ない母を許してください。ですが、私は天界からいつもあなたを見守っておりますよ？　何かあれば、ちゃんとアテナたちに申し上げるのですよ？」

「はい。」

へラ「きっと、記憶を取り戻せます。だから、希望をどうか捨てないで？」

「はい。」


そして、ゼウスたちは天界へと帰って行った。

葵はハーデスの服をギュッと掴む。


冥王「どうした、ペルセフォネ？」

「どうしてなんだろう。どうして、思い出せないの？　皆、私の事を大切にしてくれるのに、どうして私は皆が大切だった事を思い出せないの？」


語尾の最後は震えている。


冥王「泣くな、ペルセフォネ。そなたは女神、普通の人間が記憶喪失になるのとはレベルが違う。障害があって然りなのだ。大丈夫だ、余が必ずそなたの記憶を戻してみせよう。例え、戻らずとも余の想いは永遠にそなたの物だ…。」


ハーデスは葵をギュッと抱きしめ、不安がって泣く葵をいつまでも慰め続けた。