しばらくすると、ニンフたちが果実や酒、軽食になるような物を持ってきた。

大理石のテーブルに着席し、皆で午後のひと時を過ごす。


デメ「ペルセフォネ、少しでも食べましょう？」

「はい…。」


肉や魚も用意されてはいるが、葵は果実を少しずつチビチビと口にする程度。

記憶を失い、心無い人間に傷つけられ、彼女の精神的ダメージは思ったよりも大きいと再確認してしまう。

生命維持できる程度ではあるが、このままでは栄養不足で倒れかねない。


冥王「ゼウス、天界では何かわからぬのか？」

ゼウス「天界でも様々な調べを行った。しかし、これといって有効な方法は見つかっておらぬのだ。」

冥王「このままだと、どうなる？」

ゼウス「ペルセフォネの力が完全に消失し、それにともなって新しい春の女神が生まれるだろう。」

タナ「そんな！」

へラ「あなた、次は何処の女神に手を出されたのかしら？？？（ギロリ）」

ゼウス「∑違う！　そういう意味で生まれると言っておるのではないぞ！？（ガタブル）」

デメ「もし、そういう事になればこの子はどうなりますの？　あなた。」


ゼウスは葵の頭を優しく撫でる。


ゼウス「人間・城戸葵に戻る、それだけだ。」

へラ「それでは、神格がこの体から消え失せ、春の女神としての能力は消えると？」

ゼウス「そういう事になる。そうなれば、アテナもこの子を聖域から出さざるをえなくなるかも…。」

冥王「それはありえぬ。アテナはペルセフォネだから聖域に置いているのではないと言っていた。何よりも愛しい妹だからこそ、傍に置いておきたいと言っていた。だから、例え神格と能力を失ってもこの子を聖域から出す事はせぬ。もしそうなれば、今度こそここへ我が正妃として住まわせる。二度と地上には戻さん。永久にここでペルセフォネを愛で続けよう。」


ハーデスも葵の頭を優しく撫でる。


デメ「変わりませんわね、ハーデス。貴女のペルセフォネに対する情熱は些かも衰えてはおりません。」

冥王「これしきで衰える想いならば、神話の時代に彼女を妻にするため、ここへ連れ去ってはこない。生半可な気持ちでペルセフォネを愛してはおらん///」

ゼウス「変わったな、ハーデス。我らオリンポス兄弟の中で、一番物事に執着しなかったお前がここまで１つの事に執着するとはな。それほど、我が娘は愛らしいという事か。」

冥王「デメテルの娘だから、愛らしいのは当たり前だ。」

ゼウス「…辛辣な台詞を吐くのは変わっておらんな；　私をサラリと否定しおって。」