かつて、葵が訪れた場所へ皆が代わる代わる連れて行き、冥界の話をする。

葵が冥界にとってあるはずの無い、それでも無くてはならない光と癒しである事も。

おぞましき冥界にありながら、その癒しを花という形にして与えてくれた心優しい女神、冥王が唯一愛した妻。

しかし、葵にはどれも身に覚えの無い話で、他人事の様に聞いていた。

彼女の暗い表情は、冥界の闇に溶けてしまいそうで目を離せない。


冥王「今日も変化は見られぬか。」

パン「はっ。先ほど、お休みになられました。」

サガ「冥界も随分見て回った。後は、何処が…。」

冥王「やはり、あそこへ連れて行かねば。」

シュラ「あそこ？」

冥王「神と神に認められた者しか通れぬ空間を抜け、我が神殿在りしエリシオンへ。」

ムウ「確か、嘆きの壁の彼方にあるという…。」

冥王「神話の時代、余は滅多にこちらへペルセフォネを来させなかった。心か弱いあれに、冥界の阿鼻叫喚の様を見せたくなかったのだ。ゆえに、エリシオンは冥界とは正反対の環境に整えていた。」


飢えも苦しみも無い光溢れる聖地、それがエリシオン。

ペルセフォネを想い、作られた楽園。


ヒュプ「では、ハーデス様。あの手配を。」

冥王「頼む。」


双子神は早々にジュデッカを出て、エリシオンへ向かった。


ラダ「ハーデス様、双子神様たちは何処へ？」

冥王「エリシオン経由で、天界へ。」

全員「「！！？？」」

冥王「最早、余の手だけにはどうにもならぬ。あれの血族全てをエリシオンへ呼ぶ。」

ミー「では、まさかオリンポスの神たちを！？」

冥王「ゼウスには私から話をつけてある。あとは、時が来れば双子神が赴くと伝えてあるからな。」


冥界はじまって以来の出来事。

オリンポスの神々が降臨するという事。

それが吉と出るか凶と出るか、それは神であるハーデスにもわからない。