真夜中の出来事に関わらず、沙織の寝所の中には多くの者が集まっていた。

沙織、黄金と青銅聖闘士、姿見サイズの通信鏡にはハーデスとポセイドンまで。

葵は皆に囲まれる形でソファに座って泣いていた。


沙織「葵、どうして聖域から脱走など…。」


沙織はとても悲しそうに葵に問う。

自分たちが心配している気持ちが伝わっていなかったのだろうかと心を痛める。

そして、そのせいで葵が聖域を出ようと思いついたのだと思っていた。


冥王「ペルセフォネ、何かあったのか？」

海皇「アテナ、これは一体どういう事だ。そなた、ペルセフォネに何をした？」

沙織「私にもわかりません。葵、どうか話してください。私たちに不手際があったのなら、善処いたしますから。」


優しい言葉を掛けてくれる沙織だが、所詮は自分の力が戻ると思ってるから優しくするのだと信じてやまない葵。


「わ、私、本当は要らない子なんでしょ…？」


泣きじゃくりながら、それでも口にした言葉に皆が驚愕した。


冥王「何を言うか、ペルセフォネ！？　そなたを要らぬと誰が思うものか！！」

「皆が優しくしてくれるのは、私が『ペルセフォネ』っていう女神の神格者だからでしょ？　『ペルセフォネ』じゃなくなったら、私はここには要らない子なんでしょ？」

沙織「違う、違います！！　貴女は私の妹、大切な、たった１人だけ私に遺された家族！　ペルセフォネである無しに関わらず、貴女は大切な存在なのですよ！？」

「だって、だって…。何の力も無い私なんて、ここにいる理由なんて無いって。皆にチヤホヤされて、お姫様気分を味わって、そのくせ役立たずの私なんて必要ないって。記憶も無いくせに、戻せないくらい非力な女神の神格者のクセにって。そんな私が目障りだって…！」


葵の大きな瞳からは大粒の涙が溢れる。


星矢「一体、誰がそんな酷い事を葵に言うんだよ！？」

サガ「葵、少なくともここに居る者はお前をそんな目で見てはいないよ？」

「嘘、嘘…！　皆、私が『ペルセフォネ』じゃなくなったら、要らないんだっ！」