冥王「ペルセフォネ…。」


ハーデスが葵の傍に駆け寄ると、彼女は既に意識を手放していた。

痛々しいほどの涙の痕、目尻が赤くなっている。

ソッと手をかざし、目の腫れを取り、サターンにつけられた赤い痕も消し去った。


沙織「さぁ、地上へ帰りましょう。ハーデス、葵をお願いできますか。」

冥王「無論だ。」


ハーデスは葵を抱きかかえ、出口へと向かった。

すると、あの螺旋階段の下に数人の女性が倒れていた。


沙織「この方々は、屋敷の使用人ですね。どなたか、お力添えを頼みます。彼女たちも屋敷に連れ帰りましょう。」


こうして、サターンの黒い野望は潰えた―――。

屋敷に戻った沙織たちを出迎えたのは血相を変えた辰巳と使用人たちである。


辰巳「お嬢様ぁあああ！！！」

沙織「辰巳、どうしましたか。」

辰巳「どうしましたかではございません！　お嬢さまたちが居なくなってからのこの５日間、この辰巳と屋敷の者は生きた心地がいたしませんでしたぞ！」

全員「「５日間！？」」


カレンダーを見ると、確かに５日経っていた。


海皇「恐らく、あのサターン神殿の周りは時の流れ方が違うのだ。…それよりもアテナ、今はペルセフォネと失踪していた使用人たちを休ませよう。」

沙織「そうですわね。辰巳、失踪していた使用人の方も全員取り返してまいりました。部屋を用意してすぐに休ませてください。念の為にドクターを呼んで診察を。」

辰巳「かしこまりました、お嬢様。葵お嬢様はいかがなさいますか？」

沙織「葵は私たちが診ますわ。」

辰巳「では、そのように手配いたしましょう。」


葵は元の部屋に連れて行かれた。

小宇宙を探ってみるが、特に異常は見受けられない。


パン「恐らく、私たちが救出に来た安心で気を失ったのでしょう。少し休めばすぐにいつもの葵に戻ります。」

沙織「よかったこと…。」