闘士《ペルセフォネ様、サターン様がお呼びであります。どうぞ、こちらへ……。》


葵は監禁されていた一室から出され、サターンの元へ向かっていた。

しばらく歩くと、大きな一室に通された。


サターン「ペルセフォネ。今、この神殿に君を取り戻そうとする輩が侵入した。」

「え？　…あ、この小宇宙は！」

サターン「そう。君と共にこの島へやってきた連中だよ。招待もしていないのに、全く無粋な連中だ。大方、ゼウスたちの力添えもあったんだろうがね。」

「お父様……。」

サターン「愚かだね。ここへ来るまではまだ何百という私の闘士と戦わねばならない。しかも、皆黄金聖闘士クラスの手練ばかりだ。」


しかし、ことごとく闘士たちが撃破されているのも事実。

サターンは少々時期が早いが、最後の手段に出る事とした。


サターン「ペルセフォネ。今から君と私の婚儀を行う。侍女たちよ、ペルセフォネに婚礼衣装を。」

侍女《かしこまりました、サターン様。》


見れば、侍女たちは皆人間だった。


「この人たち、まさか！」

サターン「そう。君付きの侍女にしようと思って、地上から適当につれてきたんだ。強力な催眠をかけてあるから私の言いなりさ。」


侍女たちは葵を隣の小さな部屋へ連れて行き、新しいドレスを着せていく。

白と黒を基調とした可憐なドレスを着せられると、彼女は再びサターンの元へ連れて行かれた。


サターン「よく似合うよ、ペルセフォネ。さぁ、婚儀の間へ行こう。」


サターンは葵の手を取り、別室へと連れて行かれる。


「やぁ…、やだよ！　帰りたいよ、放してよぉ！！」


葵はあらんばかりの力でサターンの手を振り解こうとするが、全く彼は微動だにしない。


サターン「やれやれ、困ったお姫様だ。だが、そんな些細な抵抗も愛しいよ……。」


空いている方の手で顎を捕まれ、上を向かされた。

そして、何の予告も無く、口付けをされる。


「んんん～～～っっ///！！」


あまりに唐突で、あまりに熱烈すぎる口付け。

葵はサターンの胸をドンドン叩くが、それも些細な抵抗に過ぎなかった。


（こんなの嫌だよぅ！　ハーデスは優しいキスしてくれたのに…！！　ハーデスは、ちゃんとキスしていいかって聞いてくれたのに！！　こんなの嫌だ！！）


葵の両目の端からは悲しみの涙が溢れていた。

それをサターンが拭う事は無く、そのまま別室へ連れて行かれた。


（ハーデスは、私が泣くと優しく涙を拭ってくれたのに……！　この人、優しいのか怖いのか、わかんない！　この人、好きになれないよ！！）