冥王「そんな悲しい顔をするでない、ペルセフォネ。わかった、余はもうアテナやポセイドンとは喧嘩はせぬ。そなたに誓ってな。」

「本当？」

冥王「あぁ。」

「ありがとう、ハーデス。」


泣き出しそうな顔がもう笑った。

表情がコロコロ変わるところも彼女の愛らしい特徴だ。


パン「ところで葵。今日はどうして冥界へ？」

「あ、忘れてた；　このお手紙をハーデスに届けてくださいってお姉ちゃんに言われたの。後、私が帰ってから読んでくださいねって。」

冥王「何、アテナから？　わかった、そなたが帰ってからゆるりと読もうぞ。」

「うん///」

タナ「それで、ペルセフォネ様。冥界へはいつまで御滞在を？」

「お姉ちゃんが夕方までに帰ってきてねって言ってた。」

ヒュ「それは残念。久方振りですので、もっとゆっくりしていただきたかったものを。」

「ハーデスとお姉ちゃんが仲良くなったんだもん。また来るよ、その時はお泊りしてもいいかなぁ？」

冥王「良いも何も、そなたは冥界の女王ぞ？　そなたの好きにすればいいのだ。エリシオンにある余の神殿で、共に甘い時間を過ごそうぞ？」

パン「おやおや、聞き捨てなりませんよ？　私たちも葵と共に語り合いたいのですから。」


以前の冥界では考えられないくらい、穏やかな時間が過ぎる。

全ては葵のかもし出す、温かな小宇宙がさせる事。

癒しとは程遠い冥界で、唯一皆を癒せる幼い女神なのだから。


「もう時間だね。楽しかったからすぐに時間が過ぎちゃう……。」

冥王「できるなら、永遠に余の元にそなたを置いておきたいが、そうすればアテナが烈火の如く怒り、冥界へ攻めてこような。」

「今度は、お姉ちゃんに言ってお泊りに来るからね。」


葵はハーデスにギュッと抱きついて、別れの抱擁を交わす。


「今度来た時は、皆でもっとお話しようね。じゃあ、バイバイ。」


葵が冥界から去ると、ハーデスはアテナからの書状を見る。


冥王「ほぅ、そうだったのか。」

タナ「どうされました、ハーデス様？」

冥王「皆、心して聞くが良い。」


ハーデスはアテナの書状を読んだ。

それはポセイドンが受け取ったものと同じ内容で、アテナのとある計画への誘いのもの。

ハーデスたちは快く、その計画への参加を決定した。

計画の中心人物である葵は、それを知らず聖域へと戻っていった―――。


～続く～