しかし、クトゥルフの最後の意地であろうか。

ルルイエは大音響をあげて、完全に崩壊してしまった。

全てが崩壊し、そこには巨大な空間がポッカリと口を開けているだけになった。


童虎「馬鹿な…、アテナ、葵！！！」

シオン「これでは、…前聖戦と変わらないではないか！」


昔、自分と童虎に未来を託し、冥界の双子神との対峙という一番死に近い状況へあえて身を躍らせた葵。

今、自分達に退けと命じて、崩壊していくルルイエに残ってアテナ救出に向かった葵。

どの葵も、最後に見せたのは眩しい笑顔。


童虎「まさか、葵は…、アテナは…！！」


童虎がその場に膝を突くと、周囲に絶望の空気が流れる。


シュラ「そんな筈はない！　アテナは…、葵は、誰よりも強く誇り高い女性だ！！　こんな魔都と共に滅びるはずがない！！」


シュラの叱咤の声が響くと、ポセイドンとハーデスが何かを感じ取って空間の中を覗き込んだ。


海皇「ハーデス、感じるか。」

冥王「あぁ、かすかだが…遥か奥底から駆け上がってくる…！」

星矢「何の話をしているんだ？」

海皇「絶望するにはまだ早いという事だ。見るがいい、闇の奥底からでも駆け上がってくる、お前達の…仲間をな。」


ポセイドンの台詞に、聖闘士たちは空間の底を凝視する。

そこには、闇だけが広がっていた。

だが、少しずつ…底の方から光が迫って来るのが見える。

その光の小宇宙を感じた瞬間、皆の表情が喜びと安堵に包まれる。


聖闘士「「葵っ！！！」」


数瞬後、葵は沙織を抱き上げてその場に到着した。

あの時纏っていた鎧は既に無く、瞳の色も元に戻り、恐ろしいほど強大な小宇宙もいつもの小宇宙に戻っている。


「ハーデス、ポセイドン。アテナの様子は如何か？」

冥王「うむ、見てみよう。」

海皇「身体には問題なさそうだ。」

シオン「小宇宙にも異常はなさそうです。」

冥王「では、早々に聖域へ戻ろう。アテナも聖域で休めば目覚めよう。」


こうして、葵たちはルルイエの会った空間から見事生還を果たした。