第３話「緊急事態発生。」



九頭竜グループのパーティーの翌朝。

城戸邸で朝食を済ませたポセイドンたちはカノンを除いたメンバーで海界へ、ハーデスたちは冥界へ帰っていった。

聖域組も帰ろうとしたが、沙織はまだ日本でグラード財団の仕事が残っているという。

なので、葵たちだけで聖域に戻る事にした。


「…何だか陰気な雰囲気がする。」

童虎「特に教皇宮の方じゃの。」

ロス「ていうか、１２宮全体から陰気な小宇宙が立ち上っているよ？」

カミュ「まぁ、原因がわかりきっているが。」

カノン「女の嫉妬は醜いというが、男の嫉妬も醜いな；　サガなんて今にも黒くなりそうじゃないか。」

アフロ「とりあえず、まとまって教皇宮にいるようだから話はそこで済ませようじゃないか。」


聖域に戻ってきたはいいが、どうも恨み辛みが篭った小宇宙が教皇宮に集結している。

男の嫉妬といえばそれまでだが、そこまで葵と一緒にパーティーに行けなかった事が恨めしかったのかと思うと、いささか滑稽である。

もちろん、葵がそんな事に気付いている訳がない。

そして、帰還の報告と沙織の日本滞在を報告する為、教皇の間に向かう。


「今帰ったぞ！」


葵は元気よく入っていくが、居残り組からはドス黒い怨念が吹き出ているのを男たちは見逃さない。

気を利かせたアフロディーテは、彼女の下げていたカバンを指差した。


アフロ「葵、荷物を置いてきたらどうだい？　洗濯物もたくさんあるだろうし片付けておいで。教皇への報告は私たちがしておくから。」

「ん？　じゃあ頼むとするか。報告、頼んだぞ～。」


葵はカバンを下げ、教皇の間から出て行った。

それと同時に護衛組はシオンの前で跪く。


ロス「教皇。アテナ護衛任務つつがなく終了し、帰還いたしました。」

シオン「大儀であった。して、アテナはいかがなされた？」

カノン「グラード財団の執務が残っており、数日日本へ滞在される由にございます。」


表面上は何ともない報告ではあるが、シオンは拗ねた子供のようにしている。

旧知の仲である童虎はそれを看破し、わざとらしい咳払いをして他の護衛組に話しかけた。


童虎「いや～、聖域や五老峰で過ごすだけが人生ではないと知ったぞ！　のう、おぬしら。」


童虎が何を言わんとしているか、護衛組は感じ取った。

そして、童虎に便乗する事になる。


カミュ「そうでしたね。弟子たちと会えただけでも嬉しいものがありましたが、あの葵の装いを見れた事は別の意味で嬉しゅうございました。」