城戸邸に戻ればすでに時間は夜半。

時間も時間なので、ポセイドンやハーデス一行も城戸邸に一泊する事になった。

パーティー服という堅苦しい姿からやっと開放されると思った葵は喜んだ。

女性人たちとの会話もそこそこに、葵は用意された部屋に戻る。

化粧を落とし、髪も戻し、服も着替えて部屋についている風呂で一息つく。

湯船につかると、葵は気にかかっている事を思い浮かべた。

それは、パーティー会場で出会った九頭竜グループの秘書、陀金と妃藤羅。

彼らと出会った時、ほんのわずかだが違和感を感じた。

しかし、それはあまりに根拠のない違和感。

彼らからは小宇宙も感じなかったし、見た感じは普通の人間。

何故、こんな違和感を覚えたのか葵にはわからなかった。


「まぁ、こんな事もあるか…。」


葵は風呂から出ると、パーティー会場からもらってきたパンフレットを見た。

それは九頭竜グループの宣伝用パンフレット。


「九頭竜グループは海底資源の研究を進めるサイエンス・グループ。現在はニュージーランドに拠点を置き、ニュージーランド沖に新たな施設を建設か…。だが。」


パーティー会場で耳にした九頭竜グループの噂には腑に落ちないものもあった。

研究所と名を打っているものの、その詳細は一切不明。

施設の厳重すぎる警備、規制。

怪しいといえば怪しいのだが、何の確証もなく追求するのは得策ではないし、沙織の面子に泥を塗るような事は慎むべきだと葵は雑念を振り払う。


「疲れているんだろうな、流石に。もう休もう。」


葵はベッドに入ると、程なく眠りについた。

だが、葵のズバ抜けた闘士の鋭い感覚（カン）に陀金と妃藤羅がひっかかったのは、隠しきれていなかった悪意を読み取ったから。

そう気付くのは、相当後の話である。