しばらく談笑していると、会場内にオーケストラの生演奏が響く。


「ほぅ、生演奏か。これはまた豪華な演出だな。」

童虎「む、どうやら周りもそれらしき準備をしておるのぅ。」


周りを見ると、いかにもダンスが始まるぞという雰囲気になっている。

見れば沙織やジュリアン、ハーデス、パンドラのような上流組もその輪に加わっていた。


「アテナも踊られるのか。」

童虎「ふむ。聖域ではめったに見られん光景じゃの。」


やがて音楽に合わせ、会場はダンスパーティーに。

葵はあいにくダンスなど嗜んだ事もないので、見ている事にした。

だが、なにやら思いついた童虎が葵の手をとる。


「童虎？」

童虎「せっかくのパーティーじゃ。おぬしも楽しまにゃ損じゃぞ？」

「私は今までダンスなんて一度も…！　こらっ、童虎///！！」


童虎はかまう事無く開いているスペースに葵を連れ込んだ。


童虎「恥ずかしがるタマでもなかろうに。ほれ、かまえんか。」

「かまえろと言われても…；」

童虎「組み手の要領でやればよいではないか。いざ！」

「む…。それなら何とかなるか。」

童虎「間違っても技を出すなよ、死人が出るぞい。」

「…努力する。」


最初はギクシャクしている感じだったが、段々と呼吸もリズムも合ってきた。

そして、２人のダイナミックで、エネルギッシュな踊りはひときわ目を引きはじめる。

それは沙織たち同行者にも同じ事。

出遅れた者たちが羨ましそうに葵と童虎を見つめていた。


ロス「へぇ、なかなかやるじゃないか。」

アフロ「葵がダンスを嗜んでいたとは知らなかったな。」

カミュ「ダンスというよりも、なんだか組手に近いような気がするぞ？」

カノン「この場面を見たら、他の聖闘士も地団太踏んで悔しがるだろうぜ。」


まるで映画のワンシーンのように踊り続ける葵と童虎。

芸能界社交ダンス部も真っ青な踊りっぷりであった。

羨望の眼差しの中、２人は最後まで息も切らさず踊りきる。

（聖闘士なんだから、体力は無尽蔵。）

ダンスが終わってからパーティーはお開きになり、再び沙織たちは城戸邸に戻っていった。