少年「これは、城戸総帥。こちらの女性はお連れの方でしたか。」

沙織「えぇ。九頭竜総帥にご挨拶をと思って探しておりましたの。ちょうど良かったですね。」


すると、ジュリアンとして招待されているポセイドン、欧州の名家として招待されているパンドラやハーデスもやって来た。


女性「まぁ、ジュリアン・ソロ様まで。」

男性「ハインシュタイン家のご令嬢とご令息までお揃いで…。」


しかし、葵にはこの３人が何者かまだわからない。


沙織「お姉さま、ご紹介いたしますわね？」

「え、えぇ…；」

沙織「こちらの方が九頭竜封真（くずりゅう・ふうま）様。このパーティーの主催者で、近年目覚しい勢いで市場に踊り出た九頭竜グループの総帥ですわ。」

封真「九頭竜封真です。よろしく。」

「御剣葵です、よろしくお願いいたします。」

沙織「こちらの男性は九頭竜総帥の秘書でいらっしゃる、陀金守人（だごん・もりひと）さん。こちらの女性も同じく秘書でいらっしゃる、妃藤羅禍鱗（ひどうら・かりん）さんですわ。」

陀金「陀金です、よろしくお願いいたします。」

妃藤羅「妃藤羅と申します、よろしくお願いいたします。」

「御剣葵と申します。よろしくお願いいたします。」


葵との顔合わせが済むと、九頭竜たちは沙織たちと談笑になる。

葵はどうもついていけそうに無いなと早めにキリをつけた。


「お話中、申し訳ございません。沙織様。」

沙織「どうなさいましたか？」

「少し、会場を見てまいります。」

沙織「そうですね…。でも、あまり遠くに行かないで下さいね？」

「はい、では…。」


葵は上手にそこから逃げた。

沙織もきっとわかってくれている、自分とここの空気は合わないと。

沙織がギリギリ視界に入る所で再び壁に身を預けた。

でないと、いつ沙織が危険に晒されるかわからない。

周りには聖闘士、海闘士、冥闘士が揃っているのだから心配要らないだろうが、念には念を入れねばならない。

傍から見ればボーっと突っ立っているようにしか見えない葵。

しかし、その美貌ゆえにパーティー客は男女問わず彼女に釘付けになってしまう。


（何だか、ジロジロ見られているような気がするが…。そんなにこの格好がおかしいのか？）


否、断じて否。

葵は自分に向けられた熱い視線を完璧に誤解している。

自分では悲しいくらい無自覚の美貌、スタイル、その憂いにも似た表情がどれほど稀有なのか。

葵は考えても仕方が無いとばかりに、視線を沙織の方へ戻した。