パーティー会場に到着すると、既にたくさんの招待客がひしめきあっていた。

ここに来れば沙織もグラード財団総帥の顔になる。


沙織「他の招待客の皆様へご挨拶をしなくては。アイオロス、カミュ、同行をお願いしますわ。」

ロス「わかりました。」

カミュ「はっ。」

海皇「余も参るとするか。ソレント、カノン、同行いたせ。」

ソレ「御意。」

カノン「承知しました。」

冥王「我らも行こう。姉上、双子神、参ろう。」

パン「はい、ハーデス様。」

タナ「はっ。」

ヒュプ「承知いたしました。」


沙織たちがその場を離れると、他の同行者達はボチボチとパーティー会場に混じっていった。

しかし、こんな所が初めてな葵は下手に立ち回って沙織の顔に泥を塗ってしまってはならないと思い、文字通り壁の花になる。

何というか、一般階層であった葵にはこういうセレブな世界は居心地が悪い。

特に嫌なのが、香水のきつい匂いが交じり合う事。

美しく着飾ったりするのを否定するわけではないが、何やら上辺だけの笑顔や会話だらけというイメージがあり、お互い腹の中では何を思っているのかわかったものではない。

正直に腹を割って話せばいいのだと思うが、そう出来ない事情もあるのだろう。


？「お寛ぎの所を申し訳ありません。」


考え事をしていたら、ふと声をかけられた。


「は、はい。」


振り向くと、そこには３人の人物が立っていた。

声をかけてきたのは十代後半ほどに見える男性で、くすんだ緑色の髪、黄色い瞳をしている。

葵の美的感覚はあまり定かではないが、美少年と言っても過言ではない。


？「先ほどからあまり気分が優れないようですが、お体の具合でも悪いのですか？」

「い、いえ。人がたくさんいらっしゃるので、気後れしてしまって；」


次に声をかけてくれたのは女性。

二十代半ばほどに見えて、ウェーブのかかった灰色のロングヘアー、濃灰色の瞳、そのうえ葵に負けじとセクシー美女である。

葵は必死で見苦しくない立ち振る舞いしている。


？「今日はお１人で？」


最後に声をかけてくれたのは男性。

二十代後半ほどで、灰色がかった緑の髪に暗緑色の瞳を持ち、知的で穏やかそうに見え、顔立ちも整っている。


「いえ、一緒に来ている方がいるのですけど、招待客の皆様にご挨拶をなさるというので、お待ちしております。」

少年「一緒に来た方というのは…？」

沙織「私ですわ、九頭竜（くずりゅう）総帥。」


沙織の声が少年達の後から聞こえた。