第１話「招待状。」



日本、城戸邸。

その最上階にある沙織の執務室において、沙織と彼女の執事である辰巳がテレビ画面に釘付けになっていた。


ＴＶ『今現在、確認されている行方不明者の数は全世界で数十人といわれていますが、今後更に行方不明者が増える恐れがあると各国のメディアが報じています。また、日本でも警視庁に確認されているだけで…。』


アナウンサーも神妙な顔つきでニュースを読んでいる。


辰巳「物騒な事件ですね、お嬢様。」

沙織「えぇ。日本のみならず、全世界で同じような事件が多発しているなんて…。」


今、地球上のあらゆるメディアで連日放送されている事件がある。

それは『女性の大量失踪事件』だ。

世界各地で国籍、人種、宗教に関係なくうら若き女性が次々と失踪しているというのだ。

共通しているのは女性である事、年齢的に若いという事くらいで犯人の目的も、犯行声明も、手がかりすら全く無いのである。

世界中の警察や軍隊、果ては諜報機関までもがその捜索に当たっているそうだが、成果はまるで上がっていない。

ある国では神隠しだと言われているし、ある国では人身売買組織の誘拐だとも言われている。


沙織「一体、誰がこんな事をするというのでしょう。」

辰巳「まったくです。娘をいきなり攫われた家族の心痛、察するに余りあります。」


沙織もグラード財団の調査部をフル稼働させているが、全く効果は無い。

海界、冥界、天界のいずれかの仕業かと思ったりもしたが、今更そんな事をして得をする者など居ない。

だから、沙織は未だに有効な手を打つ事が出来ずに居た。


コンコンッ。


執務室のドアがノックされ、辰巳が応対する。

それは屋敷の使用人で、沙織宛にある財閥からパーティーの招待状が届いたという。

辰巳はその招待状を受け取り、早速沙織とパーティーの打ち合わせに入った。

しかし、その招待状がこれから起こる大騒動の発端になるとは、誰も予想していなかった。