数十分後、ボロボロになったデスマスクはようやく教皇宮へ出勤してきた。

毎度の事ながら、教皇シオンが角を生やして説教かと誰もが思っていたのだが…。


「聞いてるの！？　ディー！」

デス「うっせぇな…、聞こえてるよ。」

「大体、貴方が遅刻したり無断欠勤するのは日常的なんですって！？」

デス「キーキー喚くなよ；　いい歳した女がそんなんだから、未だに嫁の貰い手もねぇんじゃねぇか。もう２８だろ？　そろそろ大人になれよ。」

「んなっ…！」


ハンっと鼻で笑って顔を背けるが、同僚達はそれを嗜める。


カミュ「デスマスク、女性に向かってその言い方はないだろう？　しかも、葵は貴方の姉上ではないか。」

アル「そうだぞ？　葵はお前の事を心配しているんじゃないか。」

デス「心配するなら、葵を貰ってくれる奇特な男が現れるのを祈ってくれや。三十路までに相手見つかればいいんだけどな？」


普段は女性に気を使うデスマスクだが、自分の姉という事もあって毒舌になっている。

しかし、デスマスクは気付いていなかった。

葵は俯いたままブルブルと肩を震わせているのを。

それを見た何人かが、デスマスクのあまりの言い草に泣いているのだと勘違いした。


ムウ「葵、大丈夫ですか？　ほら御覧なさい、デスマスク。貴方の酷い言い草に、葵が泣いてしまいましたよ！？」

ロス「いくら肉親とはいえ、泣かせていいものではないだろ？　ちゃんと葵に謝りなさい。」

デス「あん…？　これくらいで泣くなんて、随分としおらしく………Σ！！！」


流石に言い過ぎただろうかとデスマスクが葵を見ると、いつの間にか履いていたハイヒールを手にしている葵が、俯いたままユラリユラリとデスマスクに近づいてくる。

何だかジャパニーズホラー映画に出てくる…そう、○子のように。

ヤバイと思っても、あまりの恐ろしさに身体が動かない。