翌朝、毎日執務室へ一番乗りしているサガが自席に着くと、執務室をノックする者が居た。


サガ「どうぞ。」

「失礼します。」

サガ「葵…？　どうしたのだ、早いんじゃないか？」

「フフっ。それを仰るなら、サガも早いんじゃないですか？　コーヒーでも淹れましょうか。」

サガ「頼めるか。」

「はい、少し待って下さいね。」


執務室にあるお茶セットで手早くコーヒーを淹れ、サガの前にはコーヒーの香りが漂う。

ギリシアではグリークコーヒーという飲み物があるけれど、ここにあるのは我々が知っているブレンドコーヒーだ。


「砂糖とミルクは？」

サガ「私はブラックでいいよ。甘い物は苦手なんだ。」

「フフッ、覚えておきます。」


葵は自分に与えられた席に着き、パソコンを立ち上げた。

立ち上がれば実に手早くブラインドタッチでキーボードを叩き、仕事を進めていく。

その間に、１人、また１人と出勤してくる。

そのたび、葵は作業する手を止めてコーヒーや紅茶を淹れてくれた。

そして、本来の就業時間になったのだが…約１名、まだ出勤していない者が。


「サガ、１人足りないんじゃなくて？」

サガ「…デスマスクだな；」

「まさかとは思うけど、ディーの遅刻や無断欠勤は頻度が高い？」

シオン「いちいち説教するのにも飽きたくらいだ。」


シオンが溜息をつくと、葵は申し訳無さそうに頭を下げた。