沙織「葵さん、本当によろしいんですね？」

「えぇ、もう決めた事です。総帥。」

沙織「…残念です、貴女なら聖域専任秘書として言う事も無い逸材だったのに。」

「申し訳ございません、ご期待に添えられず…。」


セスナが来るまでの僅かな時間、沙織は葵に最後の説得を試みようとしたが彼女の思いも固かった。


「総帥、サガを責めないでくださいね。これは私の我侭なのです。」

沙織「…わかりました。そろそろ、セスナが来ますね。」


視界にセスナの姿が見えてきた。

あれに乗れば、もうここへ来る事もここで出会った人たちを思い出す事も無い。


（サガ、さようなら。私にもっと勇気があればよかったけれど、それもどうやら無理みたい。でも、どうかいつまでも健やかで…。）


セスナが下りてきて、ドアが開かれた。

まずは荷物を積み込まなければいけないので、葵が先んじてセスナに向かう。

操縦士に声をかけ、ハッチを開けてもらうとそこにトランクやバッグを積み込む。


「総帥、お忘れ物はありませんか？」

沙織「えぇ、ありません。葵さんは？」

「…何も。さぁ、日本へ参りましょう。辰巳執事や屋敷の者達も待ちかねていますよ。それに、星矢達も。」

沙織「えぇ…。」


沙織は日本へ帰る事がこんなにも憂鬱になった事は無い。


沙（今なら、小宇宙でサガに連絡を取る事も出来るけど葵さんはそれを望まない。もう、どうしようもないのかしら…。）


沙織はセスナに向かい、そのすぐ後ろを葵も着いていく。