第３話「すれ違い」


宴会の翌朝、ムウの酔い覚まし薬の効果はテキメンであった。

葵はスッキリと起床し、いつもと同じ朝を迎えた…と言いたいところだが。

彼女の凄い所は、アレだけ正体を失っていても記憶はちゃんと残っているという事。

そう、眠りに着く寸前、サガに言った台詞も、キスをしていた事も、ちゃんと覚えているのだ。


「…どうしよう；」


あんなはしたない事をしてしまったと、葵は自分を恥じた。

グラード財団総帥・城戸沙織の秘書として、１人の女性として恥ずべき事だと猛省している。

何よりサガに対して失礼を通り越して無礼を働いてしまった。

ちゃんと彼に謝らなくてはと、葵は急いで執務室へ向かう。

ドアの前で一度深呼吸をすると、いつものようにドアをノックした。


サガ「どうぞ。」


いつものように、サガの返事が聞こえた。


「…失礼します。」


葵も出来るだけ平常心を装って執務室へ入った。

サガはいつもと同じで既に執務を始めている。


「…おはようございます、サガ。」

サガ「おはよう、葵。」


朝の挨拶の後、葵は何から言っていいのかと迷っている。

彼女がいつもと違う事に気付いたサガは、不思議そうな顔をして彼女を見上げた。


サガ「…どうかしたのか？」

「あ、あの…///　その…昨夜の事ですが…。」

サガ「あぁ、騒がしい宴会だったろう？　黄金達とやる宴会は、いつもああいう感じだよ。」

「そ、そうじゃなくて…///　私、サガに凄く失礼な事をして…。」


葵の言葉に、サガのペンが止まった。