第１話「麗しきお姉様」


グラード財団総帥・城戸沙織には大勢の秘書が居る。

部門ごとの担当、国ごとの担当などに分かれていた。

その中でも特に優秀な秘書には、他の秘書とは異なる仕事が割り振られる事がある。

それは、城戸沙織がもう１つの顔である戦神アテナとして、聖域へ行く時に同行する事だ。

沙織が聖域へ行くのはアテナとしての仕事をするのが主だが、グラード財団の仕事を放っておく事も出来ない。

そこで、優秀な秘書を同行させ、その秘書に外界にあるグラード財団の仕事を取り次いでもらったり代行してもらうのだ。

更に文明の利器とはほとんど関わりない聖域の為に、コンピューター制御や管理も一手に引き受ける。

もちろん、外部には他言無用が絶対条件なので、日本に戻ってきたら記憶操作をされる事が大半だが…。

人選は沙織次第だが、今回連れて行く秘書が何とも特殊な人物だと出発前日にわかった。


辰巳「お嬢様、葵が来ました。」


沙織が本部の執務室で仕事をしていると、主任執事の辰巳が入ってきた。


沙織「あぁ、来て下さったのですね。お通しして。」

辰巳「はい。葵、入りなさい。」

「失礼します。」


入ってきたのは、いかにもキャリアウーマンという隙のない女性だ。

スラリとしているが抜群のスタイル、プラチナゴールドのロングヘアー、青い瞳、魅惑的な唇。

美人秘書とはまさにこれだという感じだ。

葵と呼ばれた女性は辰巳にも微笑して会釈すると、沙織の前に進み出る。


「お呼びでしょうか、総帥。」

沙織「明日の準備もあるのに、お呼びして申し訳有りません。お伺いしたい事がありまして。」

「？　何でしょう？」

沙織「実は………。」