良い話が出てきて、ミロも一安心している。

だが、彼女が話題に上がると必ずと言っていいほど聖闘士達は複雑な表情を見せる。

彼女の過去は誰もが知っているし、その過去を未だ引きずっているからだ。

良く言えば控えめ、悪く言えば臆病で内気。

そして、彼女は何よりも聖闘士を恐れているのだ。

実際、聖闘士と会話するだけでも萎縮してしまい、怯えているように見える。


ミロ「あれから１３年経つが、彼女の心の傷は未だ癒えぬ…。体の傷はいつか癒える、だが、心の傷というものは治し方がわからないし、見える物でもないから…。」

ムウ「そうですね…。５歳といえば親に甘えたい盛りの年齢ですから、尚更ショックが大きかったのでしょう。」

ミロ「あぁ…。」

デス「まぁ、俺なんかが言ったところで説得力なんざねぇが…忘れる事なんて出来やしねぇよ。」

アフロ「それでは、彼女は一生あのままかい？　あまりに不憫だ。」

デス「トラウマを乗り越える何かがあれば…まだ救いはあると思うがな。」


シオンも溜息を付く。


シオン「聖闘士になれず自暴自棄になる輩は、やがて賊になって人々を苦しめる。そうならぬように綱紀粛正に励んでおるが…悲しい事に必ずそういう輩は出てくる。功名心と支配欲に塗れた者は、どのみち聖衣に選ばれぬといつになれば候補生全員が自覚するのか…。」


聖闘士も人だ、過ちは犯す。

だが、葵の時のような悲惨な事件を起こす事など許されない。


ミロ「せめて、俺達を見る瞳が怯えた瞳でなくなって欲しいが…。それもまだまだ遠いのだろうか…。」


ミロの呟きに、誰も答える事は出来なかった－－－。


～続く～