俺はますますショックを受けた。

聖闘士は人を殺すという彼女の声には何も感情が込められていない。

諦めと絶望と、死を覚悟したかのような静かな声。

僅か５つの子供がそんな声を出せるなんて、俺はショックでならない。


ミロ「違う、違うよ。俺たちは葵をいじめたり、ましてや殺しに来たわけじゃないよ。葵が心配だから、お見舞いに来たんだよ？」

長「葵、いつまでもそうしていないで…ちゃんと聖闘士様達にご挨拶しなさい。」


長がシーツを優しく取ると、俺達はまたしても驚いた。

話によれば日本人の血が混じっているという葵は、黒い髪に黒い瞳をしている可愛い女の子だった。

だが、身に纏っている白いワンピースには乾いた血の跡がベットリ付いている。

おそらく、両親の傍にいたのだろう。

目も赤く、眠っていないのか濃いクマが出来ている。


サガ「もしかして、眠っていないのか？」

長「そのようです。夜中になると、隣の住人がすすり泣く葵の声を聞いておりますし…。食事も水も口にしておりません…。このままでは命に関わります…。」

ロス「それほど、ご両親を失った事がショックなのでしょう…。ミロ、俺達は長と一緒に葵の今後を話し合ってくるから、お前は葵の傍に居なさい。」

ミロ「う、うん。」


アイオロスたちは隣の部屋に入っていって、この部屋には俺と葵の２人きり。

それにしても、食事も水も口にしていないなんて…。


ミロ「葵、何か食べたくないの？」

「…いらない。」

ミロ「じゃあ、眠たくない？」

「眠れない…。」