ある一室の前に来ると、長はここが女の子の部屋だと告げた。


長「葵、私だよ。黄金聖闘士様達がお見舞いに来てくださったよ？」


長は優しく声をかけるが、中から返事は返ってこない。


長「申し訳ございません。本当は礼儀の行き届いている子なのですが…。」

サガ「無理もありません。」

ミロ「女の子の名前は葵というんですか？」

長「左様でございます、蠍座様。歳は５つになります…。葵、入るよ？」


ドアを開けると、窓は雨戸が閉まっている上にカーテンまで閉められ、日の光は全く部屋に入っていない。

ベッドの上を見ると、シーツを頭から引っかぶって体育座りをしている子が居た。

アイオロスはこんな部屋だとますます滅入ってしまうとばかりに、カーテンを開けて雨戸も開けた。

窓を開けると、爽やかな風と太陽の光が部屋に注がれる。

アイオロスは女の子…葵の方に振り向いた。


ロス「…こんにちは、葵。俺は射手座のアイオロス。こっちは双子座のサガと、蠍座のミロだよ。」

サガ「こんにちは、葵。サガだ。」

ミロ「俺、ミロ。よろしくな。」


自己紹介すると、葵はシーツに包まったまま視線だけ俺達に向けた。


「…殺しに来たの？」

ロス「え…？」

「葵も、殺しに来たの？　お父さんとお母さんの様に、殺しに来たの？」

サガ「そんな事はしないよ、葵。安心しなさい。」

「だって、聖闘士は人を殺すんでしょ…？」