ミロ「馬鹿な真似はやめるんだ！」

「お願い…、死なせて！　私、これ以上生きていても仕方ないもの！！　聖域にいても、ずっと昔の記憶を引き摺って、だからと言って表で生きる術も持たない！　こんな私、生きていても仕方がない！　死なせて！！」

ミロ「君の両親が、そんな事を望む訳が無いだろう！　俺も、君を死なせたくない！！」


ミロはナイフを握ったまま、彼女を諌める。


ミロ「もう、俺の大事な人達が傷付き、倒れていく姿なんて見たくない…！　まして、愛する人を目の前で失えと言うのか！？」

「愛する…？」

ミロ「俺は、君を守りたいんだ！」

「それは、聖闘士としてのお役目で…！」

ミロ「確かに、幼い時はそうだった。聖闘士だから、君のような人達を守ろうと思っていた。だけど、大人になるにつれて、そうじゃないと思うようになった。俺は、君を…愛している。アテナを、地上の愛と平和を、君を守りたいんだ…。」

「ミロ、様…。」

ミロ「だから、死ぬなんて言わないでくれ。どうしても、死にたいのなら…俺を殺してからにしてくれ。」

「そんな事…！」

ミロ「愛する人が居ない世界なんて、守れない。君がいなくなれば、俺は聖闘士でいる意味を失ってしまう…。君が居ない世界には、この命さえ不要だ…。」

「…あ、あぁっ…！」


葵はその場にしゃがみこみ、吠えるように泣いた。

悲しいのか、悔しいのか、怖いのか、わからない。

でも、涙がこみ上げてきて止まらないのだ。