俺の言葉に、アイオロスとサガは黙って頷くだけだった。

幼かった俺にもショックな話で、何を言って良いのかわからない。

聖闘士は邪悪と戦い、弱き人々を助ける為に戦う闘士。

なのに、力の使い方を間違えて助けるべき人達をその手で殺めたなんて…そんな事、身近で起きるのは初めてだった。

そんな女の子に何を言ってあげればいいのだろう。


ロス「ミロ、ただ傍に居てあげなさい。」

ミロ「え？」

ロス「俺とサガは、女の子をこれからどうすれば良いのか居住区の偉い人と話す事になっているから、女の子にはあまりかまってあげられない。」

サガ「傍に居て、安心させてあげなさい。それだけでも立派な慰問だよ。」

ミロ「…う、うん。」


やがて居住区に着くと、居住区の長にその子の家の前まで案内された。

その時、俺達３人は顔をしかめた。

そう、血の匂いが家の中から漂ってきたのだ。

現場は綺麗に掃除され、清めの儀式も施されたというが…。

正直、どんな凄惨な光景を女の子が見たのか考えたくなかった。


ロス「…どれほど酷い事になっていたか、想像に難しくないな。」

サガ「あぁ…。それを見てしまった女の子が、どれほど心に根深い傷を負ってしまったか心配だ…。」


長が中に居るであろう女の子に声をかけたが、返事は返ってこない。

入る事を告げてドアを開けると、家の中は薄暗くて奥の方までハッキリ見えない。

まるで、女の子の心の様に…。