葵はシオンの戒めに身を震わせながら、涙目でもキッと黄金達をにらんだ。


「…人殺し！　やっぱり、聖闘士は皆、人殺しよ！！！」

カミュ「葵、落ち着くんだ！」

「血で汚れた手で、私に触らないで！！！」


カミュの手を打ち払い、葵は胸を押さえる。

脳裏には、鮮やか過ぎるほどにあの日の惨劇がよみがえっていた。

再び顔を上げた葵の目は、目の前のカミュも、黄金聖闘士達も、沙織も見ていない。

虚ろな目になって、小さな声がその惨劇を口にする。


「誰かが、窓を割って家に入ってきて…。お父さんが階段を下りていって…、誰かと言い争って…。その間に、お母さんが私をクローゼットの一番奥に押し込んで…。絶対に出てきちゃダメって言って…。」


そんな事を言いながら葵はフラフラと教皇の間に入ってくるが、誰も止められなかった。


「下の階から、お父さんの叫び声と誰かの高笑いする声が聞こえて…。お母さんが長い棒を持って下の階に行って…、お母さんの叫び声が聞こえて…、また、高笑いが聞こえて、静かになって…。私も行ったの…。お父さん、お母さんって言いながら…。」


葵は沙織の前に立っているミロの前に立つと、足を止めた。

彼女はミロを見ているようで見ていない。


「そうしたら、居間で…お父さんとお母さんは真っ赤に染まって、動かない、何も言ってくれないの…。揺すっても、動いてくれなくて…、だんだん体が冷たくなって…、お気に入りだった私の白いワンピースも、真っ赤に染まって…。うぅっ…！」


葵は両手で頭を押さえて蹲る。


ミロ「葵、しっかりしろ！」

「そうよ…、聖闘士は人殺し…。そんな人達が怖いよ、嫌い、嫌い、大嫌い！！！」

ミロ「葵！！！」

「いやぁ－－－－－－！！！！！」