２人の会話を知る由もなかった俺は、授かったばかりの聖衣を纏い、真っ白なマントを羽織って表に出た。

この姿になると、俺はとても偉いんだぞと思ったものだ。

俺よりも大きな大人が跪き、俺が通り過ぎるのを待つ。

それは、ガキだった俺に王様気分を味あわせる事だった。


ミロ「アイオロス、サガ。用意できたよ。」

ロス「あぁ、行こうか。」

サガ「ミロ、移動しながら今日の慰問先の事を教えてあげよう。」

ミロ「うん。」

サガ「今日の慰問先にいるのは、ある女の子だ。」

ミロ「女の子？」

サガ「そう、女の子だ。この子はつい先日、ご両親を亡くされたばかりなんだ。」

ミロ「え…？　病気で？」

ロス「違う。女の子のご両親は…殺されたんだ。」

ミロ「こっ…！　誰がそんな酷い事をしたの！？」


元々、孤児だった俺は両親どころか家族も居なかった。

だけど、温かく見守ってくれた師や、教皇、黄金聖闘士たちは俺にとって家族同然だ。

もし、俺が同じ様な目に合ったら…犯人を必ずこの手で討ち取るだろう。


ロス「犯人は…元聖闘士候補生の男だ。聖闘士になりそこね、挙句の果てに賊へ身をやつした。聖域から脱走する為、途中で必要になるであろう食料や路銀を奪う目的で女の子の家へ行ったのさ。」

サガ「女の子はクローゼットの奥に隠れていたから助かったけど、ご両親は…。」

ミロ「そんな…、聖闘士になろうとしていた人が、何も悪くない人達を殺したの！？」