第３話「よみがえる光景」



ミロ様のお顔をハッキリ見た時、私の胸はドクンと鳴ったに違いない。

あの幼い日よりすっかり逞しく、凛々しくなられて…女官達の憧れのはずだわ。

そんなミロ様と一緒に花の種を植えたり、お水をあげたのはとても楽しかった。

ミロ様には退屈な作業かしらと思っていたけど、幸いにも楽しんで下さって。

私の内にある『聖闘士は恐怖の存在』という概念が、少しずつ変わっていくのを感じた。

気付けば、ミロ様以外の黄金聖闘士様達とも少しずつ打ち解けている自分に驚くほどで。

同僚の女官達にも『笑顔が多くなった。』とか『表情の硬さがなくなった。』と言ってもらえた。


沙織「葵さん。」

「アテナ様！」


執務室の仕事が手隙な時、今まで通りに庭園の手入れをしているとアテナ様がお見えになった。


沙織「どうですか？　執務室の仕事には慣れましたか？」

「はい。皆様、私にまでお心を砕いてくださり…。」

沙織「フフッ、私も嬉しいです。葵さんが本当に嬉しそうに仕事をしているとシオン達から聞いておりますから。」

「まぁ…///」

沙織「それに、黄金達とも打ち解けてきたようですね？　皆さん、個性的でしょう？」

「はい。それでも、皆様お優しく…。私、どうして今まで聖闘士様たちを恐れていたのか…。」

沙織「それは無理もない事。葵さん、急に変わろうとしなくても良いのです。ゆっくりと、ゆっくりと…ね？」

「はい、アテナ様。」

沙織「そうそう、特にミロと仲が良いと聞きましたよ？」

「え///？　そ、それは…ミロ様が初めて慰問した先が私だったし、小さい頃から何かと気を使ってくださっているし…///」

沙織「うふふっ、顔が赤いですよ？」

「あ、アテナ様///！」


私を見て笑っているアテナ様は、少女みたいで…私もついつい笑ってしまった。