童虎「葵、待っておくれ。給湯室にワシの中国土産の菓子がある。それを茶請けに使うと良い。」

「中国のお菓子ですか？」

童虎「うむ。何だと思う？」

「う～ん…。ゴマ団子とか、月餅でしょうか？」

童虎「ホッ、正解じゃ。月餅を持ってきておる。それでは、用意をしておくれ。」

「はい、童虎様。失礼いたします。」


葵が給湯室に消えると、声が聞こえないように小宇宙で会話を始めた。


童虎《シオン、こんな感じで良いのかの？》

シオン《上出来だ。物事は最初が肝心ゆえ、固い雰囲気からゆったりとしている雰囲気にしたかったのでな。》

ミロ《いつもより、表情も硬いようでした。黄金聖闘士全員が揃っているのだから無理もない事ですけど…。》

シオン《１人の聖闘士に対しても、相当な恐れを抱いているのだ。表情も態度も硬くなる。アテナも仰せだった、本当は我らをちゃんと理解しているのだと。幼い日の悲惨な経験が、我らに対して壁を作っているという事も。我らが慈しみの心をもって接していけば、きっと心を開いてくれる。》

ムウ《そうですね。》

デス《荒療治と言えばなんだけど、記憶操作とか考えなかったんですかい？》

シオン《考えもした。実際、行ってもみた。》

黄金《えぇっ！？》

童虎《そんな事、聞いておらんぞ？》

シオン《あの子を聖域に引き取ってすぐの話だからな。だが、余の力を持っても記憶操作は出来なかった。》

シャカ《他人ではどうしようもないほど、精神に記憶が根深く焼き付けられていたのでしょう。それを無理矢理に操作したり、消してしまおうとすれば…彼女の精神が壊れる。》

ミロ《そうだとしても…。俺達がその記憶を覆い尽くすほどの記憶を焼き付けてあげれば、少しは良くなるさ。俺はそう信じている。》


皆がミロの想いを知っているだけに、もしかしたら彼が葵を救うかもしれないと期待を持った。