ミロ「花壇の手入れをしているのか？　葵。」


優しく声をかけるが、かけられた女官はビクッと震えた。

そして、すぐに佇まいを正して深く礼を取る。


「は…、はい。ミロ様。」

ミロ「ここの庭園は葵が管理しているというが、なかなか見事な庭だな。」

「滅相もございません…。」

ミロ「話に聞くところでは葵は動物が好きだと聞いたが、手当てとかはした事があるか？」

「動物にもよりますが…、どうなさいました？」

ミロ「実は、こいつを見つけて…。」


ミロは葵と視線を合わせられる位までしゃがみこみ、優しく包んでいた小鳥を葵に見せた。

傷付いた小鳥を見た葵は、表情を曇らせて小鳥をミロから受け取った。


「可愛そうに…。大きな鳥に襲われたのでしょう、羽根に怪我をしているから飛べないのです。」

ミロ「葵、この小鳥の世話を頼めないだろうか？　俺はそういう事が全くわからんのだ。」

「承知いたしました、ミロ様。この子が再び飛べるようになるまで責任を持ってお世話いたします。」

ミロ「そう言ってくれると助かるよ、葵。君しか浮かんでこなかったから、真っ先に君の所へ来てしまってな。」


ミロが小鳥を指先でなでてやると、小鳥も鳴く。

ミロは少しだけ悲しかった。

彼女は普通に話しているように見えるが、一度もミロを見ていない。

むしろ、小鳥にしか視線を向けていないのだ。

本当は自分を見て欲しいのに、恐れないで欲しいのに。


「それでは、私は失礼いたします。…この子を入れる鳥籠を探さないといけません…。」

ミロ「…あぁ。そいつが元気になったら、教えてくれるか？」

「…かしこまりました、ミロ様。」


早足で去っていく葵の姿は、まるで俺を恐れて逃げ惑うように見えたのが悲しかった。