第１話「傷を癒す旅へ」



数ヶ月前、ある女性が恋に破れた。

しかし、その女性が恋に破れた事は瞬く間に日本のマスコミに広がり、ニュースや雑誌の一面を飾った。

女性の名は葵、その肌は真珠のように白く、美しい黒髪が魅力的な日本で人気のある女優兼歌手である。


沙織「葵さん、お忙しいのに申し訳ございません。」


事務所には取材の電話やファックスが殺到し、自宅や事務所の周囲にはマスコミが人だかりを作っている。

そんな折、旧知の仲であり姉妹の様に仲が良い城戸沙織に呼び出された。

彼女の上手い誘導でマスコミを撒いた葵は、城戸邸の一室に通されている。


「ううん。こっちこそ、マスコミを上手く撒いてくれてありがとう。」

沙織「…やはり、あのニュースで？」

「うん…。」


葵が恋に破れた相手も、日本では有名な大物アーティストだった。

葵が歌手としてデビューする時に曲を書いてもらい、それがきっかけで恋に落ちたのだが…。

やがて価値観の違いが大きくなっていき、この間破局したのだ。

彼はそのまま、音楽の仕事でニューヨークに旅立ってしまい、彼女は１人日本でマスコミに追いかけられている。

元々、葵の才を見出した城戸光政翁が芸能界に入る事を進めてくれて今の葵がある。

そこから、沙織との交流も生まれ、ギャラクシアンウォーズの時もＶＩＰ席で招待してくれたほどだ。

沙織がギリシャ神話の女神、アテナの生まれ変わりという事実を知っている数少ない人物でもあった。

普段は明るくて、優しい姉のような葵。

そんな彼女も全然普段の元気が無い。

葵の所属事務所の社長は葵をとても可愛がっており、どうにか失恋の傷を癒してやりたいと沙織にも相談しているほどだった。

そして、沙織はある１つの賭けに出ようとしている。