カノン「葵、怪我は？」


耳に届いたのはカノンの声。

背を向けたまま、カノンは無事を確認しようとする。


「怪我はない、です…。」

カノン「上等。さて…。」


カノンは熊を睨みつけた。

熊は明らかにカノンに怯えており、後ずさりしている。

葵にはわからないだろうが、この時カノンは小宇宙で熊を威嚇していた。

動物や植物は人間よりも小宇宙を感じやすいと言われているが、葵が全く小宇宙を感じていない様子を見ると信憑性がある。


カノン「…失せろ。」


静かな一声なのに、その威力は抜群だった。

熊は森の奥へ逃げていき、そのまま戻ってこなかった。

その間、葵は全く身動きも出来ず声も出なかった。


カノン「大丈夫か？」


カノンがしゃがみこみ、優しい声で気遣ってくれる。

自分の危機が去った事もあり、緊張の糸がプッツリ切れた葵はガバッとカノンに抱きついた。


「こっ、怖かったよぉ～。」

カノン「なっ、ちょっ…///！」

「ふぇえええ…！」

カノン「あぁ、もう！　泣くな！」

「わぁあ～ん！」

カノン「聞いちゃいねぇってか；　…勘弁してくれ；」


その場で葵が落ち着くまで、カノンは彼女の背中を優しく摩る。

その後、カノンの手によって葵は無事スタッフの元へ帰った。