カノン「撮影の方はどうだ？　撮影場所に不満はないか？」

「うん、順調だよ。逆に、撮りたい場所が多くて選ぶのが大変なくらいだもん。遺跡も自然もたくさんあって…凄く癒される気がするの。」

サガ「癒される？」

「んー、なんていうか精神的に落ち着くみたいな？　ヒーリングスポットみたいな感じだよ。温かい気持ちが溢れてくるっていうか、体の調子も日本に居た時より断然いいの！　そういう事を女官さんとか神官さんに話すと、『アテナの小宇宙のなせる事ですよ。』って言われたよ。」

シオン「まさにそれよ。アテナの小宇宙は慈愛に溢れし聖なる小宇宙。そなたを気遣っておられるアテナのお気持ちがそうしているのだろう。」

「沙織ちゃんに感謝だなぁ…。あ、そろそろ休憩時間も終わりだね。私、明日の撮影の打ち合わせするから行くね。皆もお仕事頑張ってね！」


バイバ～イと手を振りながら出て行く葵を見送ると、皆がクスクス笑う。


アフロ「本当に可愛らしいな、彼女は。」

サガ「あぁ、素直だし…良い娘だな。我らにとっても良い存在だ。」

カノン「しかし、撮影を見たか？　その時ばかりは普段の表情はどこにもなく、歌手の顔になっている。やはり、プロは気分の入れ替えがちゃんと出来ているようだ。まぁ、今見ていた葵が本来の葵なのだろうが…。」

シオン「撮影後の加工が終われば、我らに映像を見せてくれるそうじゃ。」

カノン「世界で一番早くＰＶを見られるとは、それこそ葵のファンに恨まれそうですね。」

サガ「娯楽が極端に少ない聖域だ、良い刺激になる。できるなら、聖域専属の歌い手になってもらいたいものだ。」


カノンはサガの言葉に少し驚いた。

サガが一般人である葵を聖域に置きたいと言ったが、いつものサガなら、そんな事は冗談でも言わない。

せいぜい、これからも応援していこうではないか…くらいだろう。

どうやら、自分の半身である朴念仁は、相当といっていいほど葵に惹かれているようだ。