教皇即位の式典の次の日には、新射手座・葵の就任式が執り行われる。

聖域のみならず、海界・冥界に新射手座のお披露目も兼ねているのだ。

黄金聖闘士の就任式は、アテナ･教皇・現時点での黄金聖闘士全員の立会いが必要である。

しかし、その全てが揃ったのが極稀であり、今までは略式化されていた。

葵の場合は、その極稀な条件の元で就任式が行われるのだ。

これも神官たちが式の手順を事細かに教えているが、アイオロスと違って全て１度の説明で完璧にこなしてみせた。

後はミスしないようにひたすら練習あるのみだが、まずは心配無用だろう。


童虎「じゃが、これでもって聖域も磐石な体制になった。後は、この体制を末永く維持し、アテナと地上を守る術を模索していかねばな…。」

シオン「思えば、アテナ、教皇、１２人の黄金聖闘士が勢揃いしたのは、我らがまだ若い頃だったな…。あの時から生き永らえておるのは、もはや我ら２人のみ。」

童虎「いいや、シオン。今回はそれ以上の体制が整っているぞ？」

シオン「何？」


童虎は熱いウーロン茶を自分とシオンの茶器に注ぐ。

その湯気は２人の間にフワフワと上がっていた。


童虎「覚醒を拒否したとはいえ、聖域にニケの化身がおわす。確かに我らがお仕えするはアテナじゃが、ニケもまた、我らに加護を下さる尊き女神じゃ。ニケが聖域におわす事で…皆は安心できる。何せ、勝利を司る女神じゃからな。」

シオン「そうだな…。」

童虎「聖域が抱える闇の部分を担うと申しておったが、その闇が早く無くなればとワシは思う。」

シオン「だな…。」


式典まで後数日、童虎たちは眼下に見える美しき聖域を見守っていた。