白竜は訓練生達と共に居住区に居た。

何をするでもなく、彼らの修行を見学したり、話し相手になったりする。


（竜の一族にいるままでは、闇に巣食う者しか倒せない。任務でなければ、目の前で失われていく命を助ける事すらできない…。それが今まで当たり前だと思っていたけど…。）


今の自分は守りたい者を守りたい時に守れる。

その当たり前のような事が、聖闘士になればできるのだろうか。

制約は多そうだが、目の前で命の危機に瀕している存在を見捨てるような事はしない筈だ。

現に、アテナを筆頭として聖域の治安維持や暴力事件などを一掃しようと懸命に草案作りを進め、既に判明している暴力事件などの加害者はそれぞれ処罰されている。

これで、少なくとも内部的には大分良くなるだろう。


（僕が聖域に導かれたのは、これを知らしめる為か？　僕が射手座の黄金聖闘士になり、ニケの力をも有して地上を守れという啓示か？）


かつての自分のように、誰も救いの手を差し伸べてくれない子供達はたくさん居る。

そんな子供達を守りたい。

自分の力及ぶ限り、風の力を持ってして。


？「やはりここに居たか。」

「…カミュ。」


カミュの登場に、年少の訓練生達が騒ぎ出す。


子供「カミュ様だ！」

子供「カミュ様～！」

カミュ「大分と建て直しも進んでいるようだな？　よく頑張っているようだと、アテナも喜んでいらっしゃるぞ？」

子供「はい！」

カミュ「教皇から励んでいるお前達にと、果物を貰ってきたんだ。皆で食べなさい。」


後ろにあった籠の中に、オレンジやリンゴが入っている。

訓練生達は籠を取り囲み、あれよあれよと手にしてかぶりつく。