「やはり、何処の世界にでもこういう下衆はいるものだね。」


確かに、足を少年の頭に叩きつけるはずだった。

しかし、雑兵の足元には少年の姿は無く、足は地面にめり込んでいる。


雑兵「ガキがいねぇ！？」

「少年ならここに居る。」


声の聞こえた方を見ると、白いローブを身に纏った人物が立っている。

まるで、他の訓練生を守るように彼らの前で。


雑兵「貴様、何者だ！？」


雑兵たちは武器を構える。


「君達に名乗るべき名など持たぬ。と言いたいが、死ぬ前に教えてやる。僕の名は…竜の一族が一竜、白竜。」

子供「お姉ちゃん！」


訓練生達にはニコリと微笑み、助けた少年にローブをかけてあげた。


「貴鬼がマキシと一緒に黄金の誰かを連れてきてくれる。すぐにこの子へヒーリングをしてもらうように頼みなさい。」

「うん！」


そして、白竜は再び雑兵に振り向いた。

その表情は冷たい仮面のようだった。


雑兵「白竜…？　確か、次期射手座候補の！？」

「知っているなら話は早い。直にここへ黄金の誰かが駆けつける。君達に残された道は２つある。おとなしく裁きを受けるか、万が一の可能性にかけて僕と戦うか。」


雑兵たちは怯えていた、白竜の迫力に。

彼女の話は雑兵たちの間にも広がっている。

黄金数人がかりでも捕らえる事も倒す事も出来なかった、外界の異能者。

しかし、彼らの長きに渡る聖域暮らしで黄金たちの強さの程も知っている。

それに比べれば、まだ望みはあるのではないか…？

雑兵たちは再び武器を構えた。