仮設として建てられた小屋がメチャメチャになっている。

窓が割られ、扉がこじ開けられ、壁にも穴があいていた。

その小屋を前に、訓練生達はボロボロになって犯人達を睨んでいる。


子供「酷い…！」

子供「せっかく、聖闘士様たちに建ててもらった僕らの家が…！」


そんな小さな声に気付いたのか、犯人である雑兵たちが下品な笑い声を上げた。


雑兵「けっ、お前らなんかそこいらの野原で寝そべっているのがお似合いだぜ！　それくらいできないで、何が聖闘士になるだ？」

雑兵「そうそう、俺たちはお前らを鍛えてやってるんだぜぇ？」


人数的には１０数人、訓練生も同じくらい居るがまだ１０代にも届かない少年少女たちでは、既に成人している雑兵に歯が立たない。


雑兵「大体、俺らの方がお前らより強いのに、どうして俺たちが聖闘士になれないのかが不思議だぜ？　聖闘士になるなんて諦めて、聖域から出て行った方が長生きできるんじゃねぇのか？」

子供「ふざけるな！　そんな事を考えているから、お前達は聖闘士になれないんだ！」

雑兵「なんだとぉ！？」

子供「聖闘士は強いだけじゃ駄目なんだって、聖闘士様たちも言ってたんだから！　心もまっすぐじゃなきゃ、いくら強くても聖衣が認めてくれない、アテナ様も認めてくれないんだって！」

雑兵「こっの、ガキがぁ！！」


雑兵は口ごたえした訓練生の少年の胸を思い切り蹴飛ばした。


子供「ぐはっっ！」


少年は血を吐いて後ろに吹き飛ばされる。

地面に叩きつけられても、ピクリともしない。


雑兵「けっ、このくらい耐えられねぇガキが偉そうに！　所詮、世の中は力なんだよ！」


少年を蹴り飛ばした雑兵は倒れている少年に近寄り、見下す。

再び足を上げて、次は頭を狙っていた。


雑兵「１人くらい死んでも、聖域には痛くも痒くもねぇからな。…あばよ、ガキ！！」

子供「「やめてぇえええ！！！」」


訓練生達の悲痛な声が響いた。