アテナ『ニケ、まだ時間はあります。ですから、そんな悲しい決断を下さないで。』

ニケ『いいえ、アテナ。もはや時間がないのです。…彼と触れ合えなくなるのは悲しいけれど、いつか、また会えると信じています…。』


すると、ニケの身体が黄金に光り、その背から純白の翼が現れた。


アテナ『ニケ、いけません！！！』

ニケ『アテナ、どうか悲しまないで。私はいつでも、貴女のお側にいるのですから…。』


ニケの翼が黄金に輝くと、彼女の背からそれが離脱した。

そして、射手座の背に同化する。

その時点でニケはかなりの力を失い、今にも倒れそうにしていた。


ニケ『私の力の１つは射手座の聖衣に…、残りの力はアテナ、貴女に…。』


両腕を広げ、更に輝くニケの身体。


水瓶『ニケ、ニケっっ！！』

蠍『よせっ！　これ以上近づけば、ニケの神気に巻き込まれるぞ！！』


蠍座が水瓶座を必死で止めている。


水瓶『貴女は、私を１人残して逝くと言うのか！！　私たちはずっと一緒だと、側に居ると誓ったばかりではないか！！！』


その瞳から、大粒の涙がこぼれて溢れる。

だが、ニケの決意は変わらない。


ニケ『悲しまないで、水瓶座…。いつか、私たちは再び巡り会えます…。ですから、その時までどうか、アテナをお守りください…。私の水瓶座、愛してる…。』


光は少しずつ何かの形をかたどり、アテナの手の内に握られた。

それこそ、今日（こんにち）まで常にアテナの傍らにあった『黄金の杖』だった。

杖がアテナの手にしっかりと握られると、光が収まってニケがそこに倒れていた。


アテナ『ニケ、ニケっ！　しっかりするのです！！』

ニケ『アテナ…、私の力、受け取っていただけましたか？』

アテナ『えぇ、えぇっ！　この手の内にしっかりと！』

ニケ『よかった…、私がこうして人としての姿を持たずとも、私は常に、貴女へ勝利を…。』

アテナ『駄目です！　貴女も側に居てくれなくては！！　私たちは友でしょう！？　いつも、悩みを打ち明けあったり、笑いあったり…！　それが出来なくなるなんて！！』

ニケ『アテナ、私は消滅するのではありませんよ…？　ほんの少し、お別れするだけなのですから…、いつか、また人として、この世界に…転生を…。』


消え失せようとする、ニケの神気。

アテナは愕然としている水瓶座を叱咤し、呼び寄せる。


アテナ『水瓶座、早くここに！！　ニケをここに繋ぎ止めるのです！！』