第９話「黄金の翼。」



白竜は聖闘士候補生のマキシと知り合ったおかげで、他の聖闘士候補生の子ども達とも仲良くなっていった。

次期射手座候補という肩書きもあるだろうが、彼女の話してくれるアテナや黄金聖闘士たちの話は、彼らにとってはこの上ない話だった。

白竜は特に誰とも親しいわけでもないが、観察眼は優れており、嘘も脚色も一切しない。

だからこそ、生身の黄金聖闘士の話は候補生達にとって新鮮そのもの。


子供「じゃあじゃあ、サガ様とカノン様はいっつも喧嘩してるの？」

「いつもというわけじゃないよ。それに喧嘩というよりは少し気合の入ったスキンシップだね。」

貴鬼「スキンシップで双児宮がしょっちゅう吹っ飛んでるなんて、黄金聖闘士って凄いんだなぁ。」


関心どころが違うと突っ込みたくなるが、白竜はニコニコして皆の反応を楽しんでいる。


（この子達は純粋だ。アテナへの尊敬も、黄金たちへの憧憬も、全てが綺麗な気持ちのまま。この気持ちをもったまま、聖闘士になれるのは何人居るだろう。）


心正しき者こそ聖闘士というが、実際は聖闘士になりきれずに不逞の輩になる者だって居る。

今の彼らにその欠片も見出せないが、現実はそう甘くは無い。


？「何の話をしているんだ、白竜？」


その声がして、白竜は振り返りもせずに答えた。


「子供たちに会いに来たのですよ。」


候補生達の目が一段と輝いた。

聖衣を纏っていないとはいえ、彼らの憧れがそこに居る。



子供「射手座のアイオロス様だ！！」

子供「水瓶座のカミュ様も！！」

子供「双子座の…？？？」


どちらかわからない子が居るようなので、白竜は付け足してやった。


「その方はサガだよ。カノンは海界に行っているからね。」

子供「サガ様だぁ～～～！！」


まるでヒーロー扱い。

黄金たちは少し驚いたが、候補生達に優しい言葉をかけている。