第４話「白い風。」



「ひゃっほぅ～～～！！！」


そんな喚声を置き去りにして、白竜は崖から飛び降りていった。

唖然呆然としていた黄金聖闘士たちだが、正気に戻る。


サガ「バカな！　こんな高さから落ちれば、一巻の終わりだぞ！！」

カノン「アテナへの無礼は許せんが、ここで死なれては困る！　追うぞ！」


カノンがそう言って崖から飛び降りる。

身軽な者たちはカノンの後を追い、後の者は沙織への報告、落下予想地点へ急行と分かれていった。

白竜が崖から飛び降りたと聞いた沙織は真っ青になり、何が何でも死なせるなと厳命した。

一方、落下部隊。

眼下には濃い緑で覆われた聖域の森が広がり、そこに落下しようとしている１人の人間を必死に追いかけている。

人ならざる力を今まで見せ付けられたが、このパターンで無事でいられる保証は何処にも無い。

仮にも次期射手座候補。

ここで死なれては、今度はいつ射手座に認められた者が現れるかわからない。


カノン「くそっ、思うように近づけぬ！」

ミロ「ええぃ、風が鬱陶しい！」

シュラ「このままでは、あいつは地面に叩きつけられるぞ！」


その声、実は白竜に筒抜けだった。


「僕も相当甘く見られたなぁ；　ま、こんな高さでバンジーするのは命知らずか、命いらずのどちらかだよね、普通は。…そろそろ、降りる用意をするか。」


白竜は胸の前で印を結ぶ。

すると、白竜の体を包み込むように、風が集う。

それはまるで、白竜の体が白い大気に包まれているように見える。


ミロ「何だ、あれは！」

カノン「風…？」

シュラ「落下速度が、遅くなったぞ。」


白竜はそのまま、森へと吸い込まれていった。