葵が聖域の判官となり、聖域は引き締まった。

アテナや聖闘士たちが知らなかった悪事が次々と暴かれ、裁かれる者は芋づる式に出てきたのだ。

罪人たちは身分高きも低きも、老若男女の関係なく、厳しい沙汰が下される。

その沙汰を下すのは全て葵。

聖衣を纏い、裁きを下す彼女を見上げる罪人たちは神から直接裁きを下される恐怖に駆られ、己の罪を恐れている。

しかし、葵はあえて死罪を下す事はなかった。

罪の代償は死であるという事は述べるが、人はいずれ死を迎える。

ならば、その死が訪れるまでの全ての日々を後悔と屈辱に満ちた日々を過ごすという事で刑に処した。

特に、高位の者ほど屈辱的な身分への降下を言い渡す。

使用人にされた者は涙を流しながら許しを請うが、葵は一切それに取り合わない。

恨むならば、己が犯した罪の深さを恨むがいいと斬り捨てて。

だが一方で、女性や子供、老人の問題には労わりと慈しみを持って当たっていた。

職を求める者には仕事を与え、貧しい家庭には食糧や薬を無償で配布したり、医者にかかる費用の一切を免除したり。

子供たちへの教育問題にも熱心に取り組み、成績の良い子供には聖域の文官などの道が開けるように神官たちへも相談している。

聖闘士候補生達にも同様で、衣食住の保障、聖衣を賜らなかった場合の保障を充実させる草案作りにも余念が無い。

現代風に言えば、彼女は聖域という国の中で、法務大臣・文部大臣の役割を１人で担っているのだ。