そして、昨日のアイオロス即位の時と同じくして、沙織がニケをかざして葵に問う。


沙織「射手座の聖闘士にして、我が友でもあるニケを宿す者、葵。貴女は命ある限り、聖域の為に尽くしてくれますか？」

「…それは約束できない。聖域が進むべき道によっては、僕は射手座の地位を返上し、貴方達に牙を向くだろう。」


その言葉に、皆がざわついた。


「最初に貴女に言ったはずです、アテナ。僕は僕の意志で動く。それは、この世界から僕のような不幸な生い立ちを持つ子供を１人でも無くす為、この聖域で育っている子供たちの行く末を守護する為。その為に僕は聖闘士になる事を了承した。そして、僕は聖域の闇の部分を引き受けると言った。」


アテナの精鋭であり、懐刀でもある黄金が最初からアテナに楯突こうとする態度。

その異様な光景に皆がざわめきだす。


「良い機会だから、聖域の皆に言っておく。僕が過去、何をしてきたか知っているだろう。隠密行動は僕の得意分野だ。もし、やましい事に手を染めているという者が居れば、早々に身を引け。今のうちなら、大目に見てやる。だが…。」


そこで、葵から驚異的な小宇宙が溢れ出た。

威圧的で、否を言う事を許さないような圧倒的な小宇宙だ。

つい先日まで小宇宙を操れて居なかったが、聖衣を纏った事でそれも可能になったのだろう。


「明日以降、そのような事が露見した場合…例え何者であろうとも僕が裁く。僕は射手座の黄金聖闘士であり、ニケの資格を有する者であり、聖域の判官としてここに在るから。」


彼女からは、けしてアテナから感じる事が無い恐怖を感じる。

ニケは勝利を司る女神でもあるが、それゆえに戦にも長けていた。

それを知るハーデスやポセイドンも、改めてニケの恐ろしさを肝に銘じるのである。


沙織「今、葵が申した事…私の名において許可いたします。聖域はあらゆる闇を排除し、真の聖域にならねばいけません。その為には聖域に背徳的な存在は必要ありません。皆、肝に銘じなさい。」


こうしてアテナ公認の元、葵は正式に射手座の聖闘士へ就任したのであった。