他の黄金聖闘士もほぼ夜明けと共に起床する。

昨夜は今日の式典に支障が無いくらいしか飲んでいないので、皆スムーズだ。

客人たちも教皇宮に仕える者達が朝の支度をする音で、それとなく目を覚ます。

聖域の早暁は、空気が清浄である。

その空気を肺いっぱいに吸い込むと、身体の隅々まで行き届き、気分が一新されるのを感じた。

今日の就任式は昨日の教皇即位式と同じコロッセオで行われる。

おそらく、即位式後には神官総出で用意に追われていた事だろう。


沙織「いよいよですね、アイオロス？」


支度を終えてコロッセオに向かう中、沙織は隣で歩いているアイオロスに声をかけた。

アイオロスの正装は既に教皇法衣。

慣れぬ足取りで階段を下りていく。


ロス「はっ。」

沙織「私も、彼女が現れるまでは射手座の後継者は星矢だと信じて疑いませんでした。私の危機に、貴方は何度も星矢に力を貸してくれましたからね。」

ロス「はい…。」

沙織「聖域の闇を彼女はその翼で吹き飛ばしてくれますわ。貴方は彼女が吹き飛ばした闇が、再び息づかないように頑張ってくださいね？」

ロス「御意。」


その時、フワリと風が吹いてくる。

まるで、心配無用だと風たちが教えてくれたように。