真夏の夜の夢

辰巳の運転する送迎船に揺られて到着した無人島。

中に入ってみれば皆唖然としていた。


ムウ「…私、目が悪くなったんでしょうか?」

ミュー「何が見えますか、ムウ?」

ムウ「いや、ちょっと恐竜が少し;」

ミュー「えぇ。私も見えますよ、ムウ;」


一行の前にはうっそうとした原生林が広がり、その中を映画や博物館でしか見た事のない恐竜がギャースと雄叫びを上げ、ノッシノッシと群れを成して歩いていた。


クリ「これはちょっと危険なのではないか?」

ソレ「ちょっとどころではなさそうですけどね;」

サガ「ここは危険すぎる。早々に引き返した方、が!?」


サガが船の方を振り返ると、送迎船は既に沖の方へ小さく見えるだけ。


沙織「私たちを降ろしたら、早々に島へ帰るように言いましたから。」

シオン「アテナ、そろそろこの旅行の目的をお話くださいませんかの?」

童虎「左様。ただの慰安旅行ではございますまい?」

沙織「やはり、お気づきでしたか?」

海皇「フフッ、そう思われても仕方あるまい?」

冥王「今回の旅行は余たちが仕組んだ事なのだ。」

全員「「えぇ!?」」


慰安旅行とは建前で、三界の為に三神が計画した交流旅行だったのだ。

その三界の交流の架け橋である[#dn=1#]と、各界の重鎮たちの交流をより深め、良き関係であれと。

そして、今回は季節も夏ということで夏らしい旅行を計画したのだ。


冥王「涼むだけならば海界も冥界も適しておるが、涼むだけでは済まぬ事もあるしの。今回はアテナの厚意で地上になったのだ。」

海皇「我らも、たまには地上を満喫せねばな。我らの闘士も元は地上の人間。地上の空気も恋しかろう?」


そう、あの夜に聖域で会談していた内容はズバリこれ。

勿論、沙織は[#dn=1#]が参加するとなればこの二神が反対などしないというのを承知の上で提案したのだ。

さすがは、知恵の女神である。

このさい、悪知恵も司っちまえという感じだ。

しかし、沙織の悪知恵はこれだけに留まっていないのだ。

他の二神にも告げていない目的。

『[#dn=1#]お姉さま争奪戦・最後に笑うのは私です!』作戦だ。
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